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大阪家庭裁判所岸和田支部 昭和50年(家イ)107号 審判 1976年5月24日

国籍 韓国 住所 大阪

申立人 朴守民(仮名)

国籍 韓国 住所 大阪

相手方 李弘玉(仮名)

主文

1  申立人と相手方とを離婚する。

2  申立人は相手方に対し金三〇万円を相手方宅に持参又は送金して支払え。

理由

第一本件申立

申立人は主文第一項同旨並びに「申立人相手方間の長女貞子(一九七一年九月二日生)長男明男(一九七三年三月二八日生)の親権者をいずれも申立人と定める」ことを求めて調停申立をなし、その申立理由として「相手方との性格の相違から、家庭内のもめ事が絶えず、このままでは子供の健全なる成長にとつても大きなマイナスであるから、離婚したい」旨述べた。

第二本件調停の経過

大阪家庭裁判所調査官筒井くに子、同広瀬幸雄の各調査の結果、外国人登録世帯票二通、婚姻届一通、電話聴取書三通、並びに当裁判所調停委員会が本調停の過程で知り得た事実によると次の事実を認めることができる。

(一)  申立人と相手方はいずれも大韓民国に国籍を有するところ、申立人は大阪府、相手方は兵庫県において夫々出生し、昭和四五年一一月一六日に同居を開始し昭和四六年九月一三日婚姻したが、二人の間に昭和四六年九月二日長女貞子が、昭和四八年三月二八日長男明男が出生した。

(二)  申立人と相手方は結婚当初は順調であつたが、昭和四九年一〇月ころ、相手方が独断で妊娠中絶をしたことから家庭不和を生じ、以来、潜在していた性格の相違が顕在化し、夫婦関係は冷却化し、昭和五〇年一月に遂に別居することとなり、以来別居生活を続けて今日に至つている。

(三)  申立人は昭和五〇年五月二〇日当裁判所に離婚を求めて本調停を申立て、以来当裁判所調停委員会は数回に亘つて調停を重ねたが相手方の不出頭のため、本調停における合意は成立しない。

(四)  上記広瀬調査官が相手方のもとに赴き、本調停に対する相手方の意向を確かめたところ、相手方は「離婚することには異存はない。申立人と婚姻を継続する気は毛頭ない。二人の子供は申立人に養育して貰いたい」旨の意思を同調査官に対して表明した。

(五)  当裁判所調停委員会は、上記事情を考慮し協議離婚の可能性があると判断して、調停期日を「追て指定」としていたところ、昭和五一年四月一〇日申立人より「当事者間で適当な仲介人を入れて協議離婚をする予定でいたところ、仲介人が見当らず、協議離婚ができないので、調停により解決して頂く以外ない」旨の申出があつた。

(六)  申立人は、本調停の最終期日において、離婚に際しては相手方に対し、解決金として金三〇万円の支払いをしたい旨の意思を表明した。

以上の事実が認められる。

ところで、申立人相手方は日本国籍を有しないが、いずれも日本において出生し、以来日本に居住しているから、わが国の裁判所が裁判管轄権を有するものである。そこで本件についての準拠法についてみるのに、法例第一六条により夫たる申立人の本国法である大韓民国民法によるべきところ、離婚に関しては同法第八四〇条によるべきこととなる。

そして、上記認定の事実によると、申立人相手方双方共に離婚には異論はなく、婚姻継続につきその熱意を喪失していることが明らかであり、別居期間も一年半にも亘つており、只、協議離婚も(大韓民国民法第八三四条)の手続につき、双方の感情のもつれ等の事情により、これをなしえないため、調停による解決を求めているのである。

してみると、申立人らの婚姻は同法第八四〇条第六項に定める「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると解され、且つ上記事情は我が国民法の規定に照らしても離婚原因に相当すると解されるから、申立人と相手方とを離婚させることが相当である。

次に申立人は二子の親権者として申立人と定める旨の申立をしている。しかし、法例第一六条は離婚そのものについてのみならずこれに伴いその効果として当然生ずべき親権者の指定についても適用があるものと解されるところ大韓民国民法第九〇九条五項によると、父母が離婚した場合に母はその前婚中に出生した子の親権者となることはできないと規定し、離婚後の未成年子の親権者は夫たる父と法定されているのであつて、元々同法は裁判所に対し離婚の審判に際して親権者を指定する権限を附与していないわけであるから本件において親権者の指定をすることはできない。

次に申立人は相手方に婚姻の清算として金三〇万円の支払いをしたい旨申出ているところ、相手方はこれに対して何らの意思を表明しないが、諸般の事情を考慮し申立人に対して同金額を相手方に支払わせるのを相当と考える。

よつて、当裁判所は調停委員田代煌、同川端洋子の各意見を聴いた上、家事審判法第二四条に則り主文のとおり審判する。

(家事審判官 秋山賢三)

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